お金を蓄財するうえで、税金について知ることはとても重要です。
いくらお金を稼いでも、税金の仕組みを知らないと、いろいろな場面で損をしてしまうことも少なくありません。
個人で支払う税金のうち、所得税のことは何となく知っていても、住民税のことについて学ぶ機会は少ないという人も多いでしょう。
そこでこの記事では、住民税に関する以下の点について解説します!
・住民税の概要
・住民税と所得税の違い
・住民税に影響される各種サービス
税金の仕組みを理解して、お金を守る力を鍛えよう!
住民税の概要について
住民税は、前年1月~12月までの所得に対して算出され、現年の6月から課税される、いわゆる「前年所得課税」方式の税金です。
具体的には2023年1月~12月までの所得に対する住民税は、2024年6月から納付がスタートします。
1年以上前に稼いだお金に対して税金が発生するんだね!
住民税は居住している都道府県・市町村に納付する形になります。
サラリーマンの場合、所得税に関しては年末調整で還付を受ける人も多いと思いますが、住民税は前年度の確定した額に対して課税されているので、年末調整等で還付されることはありません。
また税金を支払う時点で無収入だったとしても、前年所得に対して課税される住民税は、現在の収入状況に関係なく払わなければなりません。
プロスポーツ選手が「引退した翌年の税金が高くて大変」という話をよくしますが、これは住民税のことを言ってい流のです。
まず、住民税は前年度所得に対する課税ということを知っておこう!
住民税はどのように計算されるの?
それでは、住民税はどのように計算されるのでしょうか。
・会社員 or パート(アルバイト)
・自営業者(フリーランス)
大きくはこの2つの形態によって異なります。
会社員 or パート(アルバイト)の住民税
会社員やパート(アルバイト)といった、雇用されている立場の人は、雇用主(会社)から市区町村に「給与支払報告書」という書類が送付されることで住民税額が計算されます。
この「給与支払報告書」は、1月~12月までの給与支払い金額や、社会保険料控除の金額など、住民税を計算する上で必要な情報が記載されている書類です。
社会保険料控除や生命保険料控除の額は、年末に個人が会社に報告する「年末調整」を反映した内容になっています。
個人が何もしなくても住民税が計算されるのは、会社が市役所に「給与支払報告書」を送ってるからなんだね。
つまり年末調整で控除関係の申告漏れがあれば、所得税の還付が受けられないだけではなく、結果的に翌年の住民税も上がることになるのです。
ちなみに会社が市区町村に送付する「給与支払報告書」の内容は、会社が年明けに個人に渡す「源泉徴収票」とほぼ同じものです。
複数の会社に勤めている人は、それぞれの会社から市区町村に「給与支払報告書」が送付されるので、市区町村は同じ人の収入状況等を合算した上で住民税を算出します。
自営業者(フリーランス)の住民税
自営業者(フリーランス)の住民税は、通常確定申告書を元に計算されます。
確定申告は所得税を支払う(精算する)ためのものですが、住民税を計算するための根拠にもなります。
会社員の「年末調整」が自営業者の「確定申告」にあたるものです。
税務署に確定申告した確定申告書は、自動的に市区町村に送られるので、市区町村はその内容をもって住民税を課税します。
このように、「会社員・パート」といった雇用されている人と、「自営業者・フリーランス」のように主に事業所得を得ている人によって、住民税の計算資料が異なるのです。
なお会社員等でも、医療費控除や副業収入の申告をするために確定申告も行う人もいます。
この場合市区町村は、会社から届く「給与支払報告書」の内容と、税務署から届く「確定申告書」の内容を照らし合わせて、税額を算出することになります。
住民税の支払方法について
住民税の支払方法については、「特別徴収」と「普通徴収」という2つの方法があります。
特別、、、普通、、、わかりにくいネーミングだなぁ。。。
それぞれの違いについて、以下で解説しますね!
特別徴収とは
特別徴収というのは、会社等に勤めている人が、給与天引きで住民税を支払う方法です。
日本のサラリーマンのほとんどが、この特別徴収で住民税を納付しています。
6月の給与から、新年度の住民税の引き落としが毎月行われます。
企業には「特別徴収」をすることが義務付けられており、給与からの天引きである「特別徴収」で住民税を納税してもらうことで、滞納問題が発生しにくい仕組みになっているのです。
特別徴収=逃げられない強制徴収っていうことだね・・・。
普通徴収とは
一方の普通徴収というのは、市区町村から個人宛に送付される納付書で住民税を支払う方法です。
雇用されていない個人事業主(フリーランス)は、普通徴収で住民税を支払うことになります。
普通徴収は個人が税金を納税するため、給与天引きの特別徴収に比べるとどうしても滞納の問題が発生しやすくなります。
自治体としては、滞納の可能性が低い特別徴収の人の割合が増えてほしいところなんです。
ちなみに会社員をしながら副業を行っている人は、副業分の所得についてのみ「普通徴収」で支払うことが可能です。
一般的に副業収入で20万円以上の所得がある人は、会社での本業収入と副業収入を合わせて確定申告することになります。
その際『給与、公的年金以外の所得に係る住民税の徴収方法』という項目で「自分で納付」を選択することで、副業の住民税については「普通徴収」で納付することができます。(※下図参照)
出典:確定申告書
ただし、市区町村によって取扱いが異なるため(例えば本業以外であっても、給与収入は普通徴収にできないなど)、お住いの市区町村の住民税担当窓口に確認しましょう。
副業分の収入も「特別徴収」扱いになってしまうと、市区町村から本業の勤め先に「副業分の所得も合算された住民税額」の通知がいくことになります。
副業をしていることが会社にバレてしまう原因の多くが、この住民税額の通知によるものです。
会社に副業を隠しておきたい人は、副業分の住民税については「普通徴収」で支払うように気をつけましょう。
住民税と所得税の違いについて
住民税とよく似たものとして、所得税があります。
よく似ているこの2つの税金について、違いを紹介しておきましょう。
大きな違いは、下記4点です
項目 | 住民税 | 所得税 |
---|---|---|
①対象所得 | 前年所得 | 現年所得 |
②税率 | 一律10% | 累進課税 |
③各種所得控除 | 小さい | 大きい |
④非課税基準※扶養親族等無しの場合 | 給与収入100万円(所得45万円)以下 | 給与収入103万円(所得48万円)以下 |
順に解説します。
対象所得の違い
対象所得については、住民税の概要についてでも紹介した通り、住民税が「前年所得課税」なのに対し、所得税は「現年所得課税」です。
会社を退職した場合など、急激に収入が減少しても住民税は前年の所得に対して容赦なく課税されますので、住民税の支払いに困らないよう、しっかりとお金を準備しておきましょう。
住民税の支払いのために、しっかりお金を準備しておかないといけないね。
税率の違い
住民税の税率は原則として「一律10%」です。
どれだけ課税される所得金額が大きくなっても10%という税率は変わらないため、低所得者も高所得者も平等に課税される税金と言えます。
対する所得税の税率は「累進課税方式」になっています。
これは、課税される所得金額が上がれば上がるほど税率も上がる方式です。
最低税率は、課税所得金額が195万円未満に適用される「5%」ですが、最高税率は課税所得金額が4,000万円以上の場合に適用される「45%」です。
高所得者に対しては、住民税と所得税合わせて55%の税金が課されることになります。
稼いだ金額の半分以上税金で持っていかれるのが嫌で、税金の安い外国に移住する人もいるね。
各種所得控除の違い
各所得控除の違いについて解説する前に、税金の簡単な計算方法から紹介しましょう。
「所得金額」から「所得控除」の額を差し引きしたものを「課税所得金額」と呼びますが、税額は「課税所得金額」に「税率」をかけて算出します。
所得控除の金額は、住民税と所得税で異なるものがあります。(※下表参照)
項目 | 住民税 | 所得税 |
---|---|---|
基礎控除 | 限度額 43万円 | 限度額 48万円 |
配偶者控除 | 33万円 | 38万円 |
一般扶養控除 | 33万円 | 38万円 |
このようにトータルの控除額は、基本的に住民税の方が小さくなります。
ということは、【所得金額】-【所得控除】=【課税所得金額】の計算式において、住民税は所得控除の額が小さくなるため、結果的に課税所得金額が大きくなるのです。
住民税と所得税は、計算の元になる所得や控除内容は同じでも、課税所得金額が異なる点は知らない人が多いかもしれないので、参考までに覚えておきましょう。
非課税基準の違い
よく非課税という言葉が使われますが、これも住民税と所得税においては異なる基準が適用されます。
住民税では、扶養親族等がいない人の場合、給与収入100万円(所得金額45万円)以下の人が非課税となります。
住民税においては、扶養親族等がいない人の非課税基準が所得45万円以下と定義されているからです。
なお扶養親族数によっては、上記以上の金額であっても非課税になる場合があります。
一方の所得税では、扶養親族等がいない人の場合、給与収入103万円(所得金額48万円)以下の人が非課税となります。
所得税においては、基礎控除の金額が48万円であるため、単純に所得金額が48万円までであれば課税所得金額が0円となり、非課税になります。
非課税という同じ言葉でも、住民税と所得税では考え方が違うんだね。
住民税に影響されるサービス
住民税は、市区町村が把握している重要な個人情報です。
この住民税によって、各種サービスにかかる料金等が変わる場合があります。
住民税の金額によって変わる可能性があるものは、以下のものが考えられます。
・保育料
・国民健康保険料
・介護保険料
・各種給付金
一般的に保育料は世帯の住民税額によって決定するため、住民税の課税額が多い世帯は保育料も高く設定されます。
逆に国民健康保険料や介護保険料は、住民税非課税世帯においては保険料額が軽減される場合があります。
また各種給付金についても、住民税非課税世帯のみ給付されるというケースも少なくありません。
新型コロナウイルスの影響に対する経済対策として、住民税非課税世帯などに対して現金10万円が支給されたケースもありました。
給付金とかは、住民税の金額で対象かどうかが決まることがあるんだね。
ただし、サービスと住民税の関係については、市区町村ごとに取扱いが異なる場合が多いので、詳細は居住している市区町村にご確認ください。
まとめ:住民税について理解して、守る力を鍛えよう!
個人で支払う税金には、住民税・所得税・固定資産税・自動車税・個人事業税など様々な種類があります。
今回は住民税について取り上げ、下記の点について解説しました。
・住民税の概要
・住民税と所得税の違い
・住民税に影響される各種サービス
住民税は、個人が収入を得て生活していく限り、避けることが難しい税金の1つです。
年末調整や確定申告において適切に控除の申請等を行うことで、税金を最小限に抑えることができます。
申告は面倒ですが、取れる控除は漏れなく申請して、無駄な税金を支払わないようにしましょう。
また会社に副業がバレるとまずい人は、特別徴収と普通徴収についてもしっかりと理解を深めてください。
そして住民税特有の前年所得課税という課税方式を理解していないと、いざ税金の支払い通知がきた際に「現在無収入なので税金を払うお金を用意できない…」という状態になる可能性もあります。
今回紹介した住民税の基本についてしっかり理解して、余計なところでお金の失点をしないように気をつけましょう。
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